園田智代子に告白された話
修学旅行でショッピングモールに行った時の話だ。
雑貨屋で色々と雑貨を見ていた。シャーペンとか。そのうち一緒にいた友人とはぐれてしまい、友人達を探すことにした。
内心結構焦っていたので足早に雑貨屋を歩いていると近くを歩く女子学生達のコソコソとした話し声が聞こえてきた。
細かい内容は聞き取れなかったが、何やら園田智代子が誰かに告白するかどうかで盛り上がっているらしい。
まあそんなことはどうでもいいので俺は友人達を探すために別の場所へ。
今度は化粧品売り場のようなとこ。
通りがかっただけでこんな所にいるはずないだろうと考えてすぐに通り抜けようとすると、クラスメートの一人が俺に近づいてきた。
「園田さん、○○のこと好きらしいよ」
え?
園田智代子が?
俺のこと?
好き?
...
まっさか〜!
フル回転した頭はそんなはずないという結論を出した。
「じゃ、頑張ってね!」
耳打ちしたクラスメートは前を歩いている仲間たちのところへ行ってしまった。何か話している。一人がチラリと俺の方を見た。
園田智代子だ。
視線を戻す園田。
なんだかいたたまれない気持ちになった俺はすぐにその場をあとにした。
やっとこさ広い場所に出た俺は友人達を見つけた。
その時の俺はなぜか歯列矯正のための矯正器具(取り外し可能)をつけていた。
友人の一人がこれまたなぜか物理の教科書が見たいと言いだし、さらに謎だが、俺は今日それを持っていた。
キャリーバッグの中にある物理の教科書を探しながら、俺はつけていた矯正器具をはずした。
わざわざ矯正器具をはずしたのは、もし園田智代子に告白されたらどうしよう、と身分不相応に思ったからだ。(矯正器具をつけたままでは、声がこもり、滑舌は悪くなる。まともに会話はできないのだ)
しかしなぜか矯正器具はまだ口の中に。
おかしい、俺ははずしたはず...
事実、外した矯正器具は俺の手の中にあるままだった。
増えた!?
矯正器具が???
は??????????
思考はパニックを起こし、なぜか二倍に増えた矯正器具を口から外す。
その時だった。
「○○...」
俺を呼ぶ小さな声が聞こえた。
誰?
ふと上を向くと、園田智代子が俺を見つめていた。
こ、これは!!!
「え〜っと、その...」
「やっぱりなんでもないや!」
焦って離れていく園田。
二倍に増えた矯正器具を握り締める俺。
俺の近くには別の場所に続く磨りガラスの道があった。さっきのクラスメートやらがコソコソと待機している。
園田はクラスメートのところへ。
そして、磨りガラスへ消えていき...
「大好きだよ...」
小さく、確かに聞こえた園田の声。
正直、ときめいた。
心臓の音が本当に大きく聞こえて、ずっと跳ねてる。
磨りガラスに映る影は見えなくなったが、胸の鼓動は止まらなかった。
その後、俺の近くにきた園田の友人が何か色々言っていた気がするけど、夢から覚め、この文を書いている俺はもう思い出せなかった。
園田をよろしくとかそんなことだった気がするけど、思い出せんな。
しかし、なぜあの矯正器具は二倍に増えたのだろう。