緒方智絵里を好きになってしまった

 

ーー確かあれは1年ほど前のことだった。

 

後期期末試験の慌ただしく張り詰めたような空気を学生が一斉にゴミ箱に放り込み、これから来る春休みに学校全体が色めく。俺は3年生の終わりを感じながら居室の整理をし始めていた。よく隣から聴こえてくるかわいらしい音楽や声にシャンシャンとなるゲーム音。それについて興味を持ったのはこの隣人のせいだったことは言うまでもない(もちろん感謝している)。「アイドルマスターシンデレラガールズ」はもちろん「アイドルマスター」シリーズについてすら何も知らなかった俺は、アニソンメドレーに出てくるアニデレopとアニメのS(mile)ING!の一部だけは聞いた事があるという程度の認識だった。

居室の整理も佳境に入る中、隣からある曲が聞こえてきた。

 

 

"まぶしいほど 赤裸々に 

プリーズ!プリーズ!!レボリューション!!!"

 

 

「Yes! Party Time!!」だった。たまに友人のゲーム画面を眺めていた時によく流れていたハイテンポでリズミカル、かわいらしくポップな印象の曲。なんとなくYoutubeで検索してみた。出てきたのは黄色に輝くステージに立つ、5人の煌びやかな衣装を身に着けた少女達だった。それもかなり幼い感じの...(その時は知らなかったが、櫻井桃華佐々木千枝龍崎薫市原仁奈赤城みりあが歌うイベントバージョンだった。そのため、しばらくの間こちらが元のメンバーだという誤解をしており本家は別だと気づくのはかなり後のこととなる)。俺は金髪で気品のある女の子に惹かれ、ずっとリピートしていた。それからすぐアニソンメドレーで流れていた「Star!!」のぴょんぴょん跳ねるシーンが見たくてアニメを視聴した。

 

そしてこのアニメが、緒方智絵里との最初の出会いとなった。

 

第一印象は"印象の薄い、少しとろそうな女の子"だった。テレビ出演回や江戸切子職人回を見ても特にそこまでの感情はなく、頑張ってほしいな...くらいの小さな思い入れすらないような印象だったのだ。

 

結局、アニメ終了時まで緒方智絵里は俺の中で"シンデレラプロジェクトに所属する1人のアイドル"だった。

 

「笑顔なんて誰でもできる」という普通に悩まされる卯月につられて泣いてしまったが、それでも数あるアニメの一つに過ぎなかったアニデレ。それでも虚無感に襲われるくらい面白かったので、またもサイトやらYoutubeやらでデレについて目的もなくサーフィンを繰り返していた中、とある曲に出会う。これが俺の人生や価値観ををぐるりと変える出会いとなるのだがそんなことは露知らず、俺はその動画の再生ボタンを押した。

 

https://youtu.be/Ug-TTnB3MGA

緒方智絵里】cherry*merry*cherry - バンドアレンジ

 

ーー戦慄した。

体の中の血液が目まぐるしく周り脳が沸騰するのを感じた。ふと気がついたら曲が終わっていたのでまた再生した。心臓が激しく鼓動して、俺の意識にその興奮を伝えてきた。

 

 

初めての体験だった。

 

 

それからは智絵里の声に漬け込まれるようにずっとこの曲を聴いていた。何度聴いても新鮮で、飽きなんて来るわけがなかった。ただひたすらに智絵里の歌を、声を、欲していた。しばらくして少し冷静になると、今度は画面に映るドレスを着た少女が見えた。智絵里の容姿は、今までその目に映ってきたどの女の子よりも魅力的だった。全身が彼女を求めていた。赤血球の1粒1粒に智絵里の声をのせて、そのかわいさを感じていた。

 

俺は緒方智絵里を好きになっていた。

 

それは今まであらゆるものに対して抱いてきた感情のどれとも違うものだった。智絵里なしでは生きられなくなってしまった。性的な好意でも友情のような好意でもなく、それは崇拝に近かった。智絵里が生まれてきてくれたことに感謝し、智絵里が存在していることに感謝し、智絵里を好きでいられることに感謝した。

たった3分の動画を見た後は、もうその前の状態に戻ることなどできなくなっていた。

 

それからは智絵里をもっと身近に感じるためにデレステをインストールした。そして智絵里について知るためにサイトを練り歩き、自分の中に緒方智絵里という存在を構築していった。

 

こうして俺は智絵里Pになった。

 

これからも俺は智絵里のPでい続けるしPを辞める時は俺、もしくは俺という存在が死ぬ時だと思っている。智絵里について考えることがなくなるということは俺という存在が一つ、完全に死んでしまったことを意味するだろう。

 

 

これは智絵里のダイマではないので智絵里について書くことは無い。それはまた別の機会に。

 

 

ただ一つ、願うのならば...

 

あなたに智絵里を知ってほしい。

あなたに智絵里を好きになってほしい。

 

Pとして、一人のファンとしての願いだ。